【日本酒レビュー】待ちきれない人のための「冬の月」。三季熟成が魅せる、鋭い酸味と白桃酵母の魔法

今夜の「孤高の晩酌」は、岡山県浅口市寄島町・嘉美心(かみこころ)酒造の限定品、**「純米吟醸 三季熟成 冬まで待てない冬の月」**を紐解きます。

冬の風物詩として知られる「冬の月」のしぼりたてを、あえて三つの季節(春・夏・秋)を越えてじっくりと寝かせたこの一本。熟成によって研ぎ澄まされたその味わいは、冬を待つ焦燥感さえも愉悦に変えてくれる、完成された「秋の完成形」でした。

味わい:熟成の「鋭さ」が引き立てる、可憐なリンゴと桃の記憶

「冬の月」らしい甘みを想像して口に含むと、良い意味でその期待を裏切る「進化」を感じます。

  • ファーストインパクト: 熟成によって角が取れたかと思いきや、驚くほど鋭い酸味が舌を刺激します。この酸が、お酒全体の輪郭をキリリと引き締めています。
  • フレーバー: 酸の奥から、嘉美心らしい仄かな甘味りんご感が広がります。さらに、使用されている「岡山白桃酵母」由来の、どこか優しく瑞々しいニュアンスが重なります。
  • 余韻: 最後は熟成酒らしい、落ち着きのある苦味の余韻。アルコール分16.5度という飲み応えのあるボディが、秋の夜長にふさわしい満足感を与えてくれます。

「フレッシュな甘さ」から「洗練された酸と苦味」へ。季節を跨いだお酒だけが持つ、時間の奥行きを感じる一杯です。


スペック詳細

岡山産の素材にこだわり抜いた、嘉美心酒造の自信作です。

項目内容
銘柄名純米吟醸 三季熟成 冬まで待てない冬の月
酒蔵嘉美心酒造(岡山県・浅口市)
原料米アケボノ(岡山県産米100%使用)
精米歩合麹米50%、掛米58%
アルコール分16.5度
使用酵母岡山白桃酵母
原材料米(国産)、米麹(国産米)

このお酒の「ここ」が凄い!深掘り解説

「孤高の晩酌」をより深く愉しむために、嘉美心のこだわりを深掘りします。

1. 「米の旨口」を貫く嘉美心の哲学

嘉美心酒造は「身も心も清らかにして、美味しいお酒を醸したい」という願いを込めて命名された蔵元。岡山県産の「アケボノ」という飯米としても親しまれるお米を使い、お米本来の持つポテンシャルを最大限に引き出す「旨口」の造りに定評があります。

2. 独自開発「岡山白桃酵母」の華やぎ

このお酒の個性を決定づけているのが、岡山県特産の白桃から分離された**「岡山白桃酵母」**です。この酵母が、テイスティングで感じたりんごのような爽やかさと、白桃を思わせる柔らかな香りを生み出しています。熟成を経ることで、その華やかさが落ち着きのある「上品な気品」へと昇華しています。

3. 三季熟成という「忍耐の美学」

「冬の月」は通常、しぼりたてのフレッシュな状態で楽しむものですが、あえて氷温で三季(春・夏・秋)を過ごさせることで、成分が円熟し、酸味の質が変化します。この「鋭い酸味」は、時間が作り出した天然のスパイス。冬のしぼりたてでは味わえない、この時期だけの限定的な表情です。

まとめ:孤高の晩酌、今夜のペアリング

酸が立っているため、少しオイリーな料理や、旨味の強い発酵食品と合わせるのが「通」な愉しみ方です。

  • 秋鯖の味噌煮(鋭い酸味が、味噌のコクと鯖の脂を綺麗にまとめてくれます)
  • ローストポーク(りんごソース)(お酒のりんご感とソースが共鳴します)
  • 熟成成タイプのチーズ
  • 銀杏の素揚げ(苦味の余韻と、銀杏のほろ苦さがベストマッチ)

少し大ぶりのグラスで、ゆっくりと温度を上げながら味わってみてください。

冬を待ちわびる気持ちをこの一本に託し、季節の移ろいを舌で感じる。それこそが、家飲み派に許された「贅沢な孤独」の極みです。


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